研究概要 |
本年度は,地球規模の二酸化炭素循環における地球深部物質の役割を明らかにするため,まず,次の2点について特に研究を行った. (1)分析手法の開発.(2)天然の岩石からのデータ抽出. (1)分析手法の開発 金沢大学に設置してある電子線マイクロプローブアナライザー(EPMA)とLaser-ablation ICP-MS装置を用いて,微小領域から炭酸塩鉱物の主要元素/微量元素を測定するルーチンの構築と,そのデータの確度と精密度に関して検討した.特に微量元素測定においては,標準物質の既知のデータと比較中であり,現在開発中の測定方法が確立されれば,これまでの同様の種類の測定方法よりも圧倒的に,少量かつ短時間で測定が可能となる. (2)天然の岩石からのデータの抽出 特に天然試料として,南西インド洋で採取された地球深部物質であるカンラン岩中の炭酸塩鉱物に着目して,その産状,鉱物種,化学組成的特徴を明らかにした.その結果,炭酸塩鉱物の産状は基本的に脈状であり,その鉱物種としては主にアラゴナイトとカルサイトであることがわかった.また,アラゴナイトタイプがカルサイトタイプより常に先に形成されており,この違いは,地球深部物質の変質程度/条件の違いによるものであるという知見を得た.特に,カンラン岩中のカンラン石の変質過程と炭酸塩鉱物の形成は密接に伴っており,カンラン岩と海水の反応によって,周囲の海水の化学的特徴が変化することと温度効果により,アラゴナイトの次にカルサイトタイプが形成されることが説明できることを示した.また,これ以外の天然試料として,日本の数カ所の地球深部物質が露出している地点において予備的な野外調査を行った.
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