研究概要 |
岡山大学地球物質科学研究センターの高質量分解能二次イオン質量分析計(Cameca ims-1270)は、申請者を中心として運用され、成果をあげている。本年度は、既に確立している玄武岩質ガラスの局所Li-B-Pb同位体分析法に加え、局所酸素同位体分析法の開発を実施してきた。これに関しては分析法自体の技術的問題はほぼ解決し、当センターに既設の安定同位体質量分析計(VG PRISM, SIRA12)を用いた標準物質の準備を行う段階に至っている。また、より幅広い同位体組成変化及びマトリクスの違いに対応する分析法を確立するため、リチウム及びホウ素を添加したガラス標準試料の作成を行った。 また並行して、上記分析法をハワイ・アイスランドのピクライト及びピクライト質玄武岩中のオリビンメルト包有物に適用し、マントル中に存在する同位体不均質のレンジ及び、その端成分の解析を引き続き実施している。本年度はメルト包有物のホストであるオリビンの起源に関する考察を進めており、それらが親メルトから直接結晶化した斑晶であるのか、あるいは周辺の岩石由来の捕獲結晶であるのかを、変形組織から推定、同位体組成との比較を行っている。まだデーターの蓄積は十分ではないが、従来無視されてきたメルト包有物を含むホスト鉱物の起源を明確にする試みは極めて重要と考える。 さらにメルト包有物にとどまらず、マントル構成物質であるペリドタイトのオリビンや斜方輝石、単斜輝石の分析も精力的に実施しており、その結果とメルト包有物の結果を合わせることによってマントルを中心とした物質の多様性とメルトの形成時のダイナミクスの理解が進むに違いない。
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