今年度は、南極大陸の「くわがた」および「とっつき」エリアから回収された宇宙塵試料のうち、フィルターにより選別された直径40〜100ミクロンの大きさの宇宙塵から、大気圏突入時の加熱による溶融を経験していない試料を実体顕微鏡を用いて選別した。その後、走査電子顕微鏡(SEM)を用いた表面観察および化学組成分析を行った。さらに「とっつき」宇宙塵試料についてはX線回折分析による鉱物同定も行った。これらの非破壊分析を行った後、本研究で開発した試料処理方法を用いて片面研磨試料を作成し、電子顕微鏡(EPMA)による元素分析を行った。また、いくつかの試料については、2次イオン質量分析計(SIMS)による酸素同位体分析を行った。これまでに分析を終えた試料にはかんらん石や輝石などを含む物があり、これらの酸素同位体は炭素質コンドライトに含まれる無水珪酸塩に見られる酸素同位体組成と類似していることが判明した。これらの研究成果は2006年3月にアメリカ合衆国・テキサス州で行われる「第37回月惑星会議」において発表される。本研究の最終目的である結晶質シリケイトの起源に関しては、今後に予定している希士類元素分析および希ガス分析の結果をふまえて、総合的に解釈・検討していく必要がある。 一方、宇宙塵試料から微量の希ガスを抽出するための小型真空炉を設計・製作した。動作テストを行った結果、2000℃まで到達することが可能であることが判明し、期待通りの性能が得られた。今後、既存の希ガス質量分析計に設置し、テスト試料の分析を行い、宇宙塵試料の分析を行っていく予定である。
|