研究概要 |
南極大陸「とっつき」エリアから回収された宇宙塵試料のうち、フィルターにより選別された直径40〜100ミクロンの大きさの宇宙塵から約300個の宇宙塵を採集し、走査電子顕微鏡(SEM)を用いた表面観察および化学組成分析を行った。これら採集した宇宙塵うち14個の試料について、片面研磨試料を作成し、SEMによる薄片断面の観察、電子顕微鏡(EPMA)による元素分析を行った。その後、2次イオン質量分析計(SIMS)を用いて、直径約10ミクロン以下の微小領域に対する酸素同位体分析、希土類元素分析を行った。SIMSを用いた分析の測定精度を昨年に比べて向上することに成功し、隕石のデータとの比較・議論が可能となった。また、37個の試料についてはX線回折分析による鉱物同定(XRD回折実験)を行った。今後、EPMA,SIMSを用いた分析および希ガス同位体分析を行っていく予定である。 本研究で開発した小型真空炉を既存の希ガス質量分析計に設置し、バックグラウンド、テスト試料の分析を行った。隕石用真空炉に比べて低バックグラウンドを得ることが出来た。現在、SIMSによる酸素同位体分析、希土類元素分析を終えた14個の試料についての希ガス同位体分析が進行中であり、宇宙塵試料から太陽風起源のHeを検出することに成功した。これら希ガス同位体分析の結果も併せて、本研究成果は2007年6月に東京・国立極地研究所で行われる国際学会、「第31回南極隕石シンポジウム」において発表される予定である。
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