研究概要 |
重イオン慣性核融合のエネルギードライバである粒子加速器システムから生成される粒子ビームをパルス圧縮するファイナルビームバンチング領域について,そのビームダイナミクスを明らかにすることが研究目的である.この領域では,大強度の重イオンビームを急激にパルス圧縮するため,ビームの質の劣化が予想されターゲットへの効果的な照射を妨げる恐れがあり十分に検討されなければならない.また,非常に大電流なビームのため,空間電荷効果が大きくビームの挙動に影響を与え,非中性プラズマとして振る舞うことが予想される.ビームダイナミクスシミュレーション用粒子コードを開発し,不安定性の成長やビームの質の劣化を検討して合理的な重イオン慣性核融合のシステム設計のための指針を得ることが本研究の目標である. 本年度は本研究計画の初年度であり,主要設備として計算機環境の構築とシミュレーションコードの開発・調整等を主に行った.本研究予算で購入した計算サーバを導入し,環境を整えその計算サーバ上でビームダイナミクスシミュレーション用の計算コード開発および調整を行った.計算手法としてはプラズマの計算モデルとして良く用いられているParticle-in-cell法をベースにし,本研究目的に適した粒子コードを開発した.開発したシミュレーションコードで計算を行い,上記に述べたようなビーム不安定性や質の低下を確認できた.別途の計算により,ビーム進行方向のパルス精度なども検討を行い,今後の指針としている. また,本年度はParticle Accelerator Conference 2005(別途予算(日本学術振興会・国際学会等派遣事業)により参加)やInertial Fusion Science and Applications 2005という本研究テーマに非常に関連した国際会議に参加し情報収集を行うことができた.さらに,東京工業大学の重イオン慣性核融合研究グループや米国ローレンス・リバモア国立研究所およびローレンス・バークレイ国立研究所の研究員とも情報交換や共同研究を進めることができた.
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