研究概要 |
大気圧下におけるグロー放電生成に関して,高気圧放電に適していると考えられるマイクロギャップの放電特性評価を行った。数〜数百μmのマイクロギャップ間にHeなどのガス流を導入することで放電安定化抵抗を介した直流放電によって,大気圧グロー放電生成が可能であることが知られている。しかし,その放電安定化領域は狭く,数mA以上の電流上昇により,スパーク放電へと遷移してしまう。そこで,直流ではなく,高速パルス電圧を印加することにより,過渡グロー放電を形成するという手法を採用した。微小なマイクロギャップ間の放電であるものの,大気圧のHeガス流において60ns以下の過渡グロー放電形成時間を確認し,パルス幅50nsの高速パルス電源により過渡グロー放電の繰り返し駆動に成功した。これは,大気圧マイクログロー放電へ,瞬時パワーがkWオーダを超える大電力を注入可能であることを示しており,大気圧グロー放電のプラズマパラメータ領域の拡大につながる研究成果である。 次に,非線形伝送線路を用いた電源開発について,その主要な構成要素である非線形コンデンサがチップ型積層セラミックコンデンサを利用することで実現可能であることを見出した。温度特性Fの50V定格コンデンサを200V程度までの印加電圧範囲で使用することで,非線形コンデンサとして十分に利用可能な特性を得ることができる。また,直列接続による高耐圧化に関しては,20直列までの動作を確認することに成功した。さらに,LCはしご型伝送線路とせず,1段の非線形LC共振回路とすることでも昇圧および波形急峻化効果が発生することを実験により確認した。バッテリー駆動を念頭に置いた直流4.8V駆動の試作電源では,波高値1.9kV,立ち上がり時間80ns,エネルギー2.5mJの高電圧パルスを380Hzの繰り返し周波数で発生することに成功した。
|