最終年度である本年度は前年度に整備したチェレンコフ計測器を用いた実験セットアップに乗っ取った粒子シミュレーションを行い、高速電子のボルツマン温度が数MeVである場合は、エネルギースペクトルがを数10keVの誤差でかつ光量的に十分計測可能であることが分かった。 これに関連し、可視光領域でチェレンコフ光をより効率的に計測する手段として、プリズム型ターゲットの開発を行った。固体平板をターゲットとすると、ターゲット裏面から放射する遷移放射との区別が非常に困難となる。そこで、チェレンコフ光は固体内部で生成することを利用し、ターゲット裏面に傾きを与え全反射させることで側面からの計測を行うことを考案した。新たに作成した光線追跡計算により、得られる信号を求め、エネルギー分解能が10倍以上向上するという成果が得られた。それに併せた像転送系、検出系を設計、物品を購入した。 また、高エネルギー物理学分野でチェレンコフ媒質として用いられているエアロジェルという物質を使用すると遷移放射との区別が容易であることを考案し、米国General Atomics社との共同研究としてエアロジェルターゲットを作成した。特に高エネルギー電子を計測するために、レーザープラズマ相互作用実験で数百MeVの電子発生の実績のあるハーキュラスレーザーシステムを持つ米国ミシガン大学超高速光学施設の研究員と意見交換を行った。 またその他として、ターゲット内の電子の挙動を調べる目的で、チェレンコフによる計測とは別に電子の放射分布計測を行った。レーザーを極端斜入射すると、高速電子は通常の伝搬ではなく、固体ターゲットの表面を滑るように伝搬することを実験的に始めて示し、論文を出版した。
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