本年度は、まず高密度・高指向性キセノンクラスタービーム源の開発を行った。実験では、高圧バルブから噴射されるガスを断熱自由膨張させ、その後指向性を向上させるために漏斗上のスキマーを通すことによって高輝度クラスタービームを生成した。その際、キセノンとヘリウムの混合ガス(比率:ヘリウム70%-キセノン30%)を採用することにより、純キセノンガスを用いる場合と比較して遥かに大きなクラスターを生成することができた。また、キセノンクラスターはビーム軸上に局在していることがビーム強度の時間・空間分解計測から判明し、目標とするビーム源開発が成功したと言える。 一方、クラスターのクーロン爆発現象を調べるために必要となる、電子・イオンの飛行時間分解分析装置を装置に組み込み、動作テストを行った。また、X線レーザーとキセノンクラスタービーム源のアライメントを高精度で調整することを行い、実際にレーザーを照射して実験できる段階まで準備は進んでいる(最初の実験は18年4月に行う予定)。 クラスターとX線レーザー相互作用シミュレーションに関しては、現在までに電子衝突イオン化と光電場によるトンネルイオン化を考慮した計算を行うことができるようになっているが、光子エネルギーが高いX線レーザーでは、光吸収電離、特に内殻電離が重要な素過程の一つになる。そのため、現在これらの断面積についてのデータベースを構築している最中である。 以上のように、実験に関しては順調に計画を遂行できているため、来年度はX線レーザーとの相互作用に伴うキセノンクラスタープラズマのクーロン爆発現象に関する有意義な情報が得られると考えられる。
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