研究概要 |
本研究では、従来と比べて格段に波長が短いX線レーザー(波長13.9nm,強度2x10^<10>W/cm^2)をキセノンクラスターに照射する実験を世界で初めて行い、その相互作用を明らかにすることを目的としている。用いたX線レーザーは第3世代の放射光光源と比べて実に100万倍もの強度を有しており、X線域での非線形光学効果の出現などが期待できる。さらに、レーザー光子エネルギーはキセノンの内殻電離を起こすのに十分であるため、内殻電離誘起プラズマと言ったこれまでにない超強結合プラズマを発生させることが可能となる。 この相互作用によって生成された多価イオンを飛行時間分解分析装置(TOF-MS)を用いて検出した結果、キセノン内殻電離状態(4d^<-1>)の崩壊に伴いXe3価イオンが最も多く発生することが判明した。さらにこの3価イオンの生成量はキセノンクラスターサイズ、及び、X線レーザー強度に大きく依存することも明らかとなった。このことは、いわゆるダブルオージェ過程と呼ばれる崩壊過程が支配的であることを意味している。この結果は、従来行われてきた放射光での同様の実験結果とは大きく異なり(低強度である放射光ではノーマルオージェ過程と呼ばれる崩壊により2価イオンが支配的に発生する)、クラスター内部において何らかの非線形光学効果が生じている可能性を示唆している。本研究では、何故X線レーザーを用いることにより放射光とは異なる実験結果が得られるのか、というメカニズムを数値シミュレーションを含む原子過程の観点から提案し、雑誌"Physical Review Letters"へ投稿している。
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