本研究の目的は、これまで困難とされてきたペレット溶発雲における厳密な局所電子密度の評価を可能とするための二次元分布計測手法を開発し、その確立を目指すことである。また、ペレット溶発雲中における局所電子密度の評価、すなわちそこから放射される線スペクトルのシュタルク拡がりの二次元的評価を行う際に鍵となるマルチスペクトル画像を簡便に取得するための手法として、複眼光学系を用いることの有用性を示すことも目的としている。昨年度は、試作した複眼光学系を用いたマルチスペクトル画像計測を用いて、大型ヘリカル装置に入射されたトレーサ内蔵固体ペレットの溶発雲から発せられる主たる線スペクトル(H_αやH_β)や連続光成分を観測して、計測システムの基本的性能を確認した。ここでの解析結果は、連続光成分に何らかの線スペクトルが影響している可能性を示しており、それを確認するために、平成18年度は、連続光成分を得るために用いている干渉フィルターの透過特性を中心波長497.0nm、半値幅5.0nmから中心波長536.6nm、半値幅5.0nmに変更した。現在、新しい干渉フィルターによる実験データの解析を、分光器による実験データと突き合わせながら進めている。また昨年度の結果を基に、遮光フィルターを追加したが、これにより各イメージにおいて適切な露出が、ほぼ全ての場合において得ることができるようになった。これにより、複眼光学系がマルチスペクトル画像を簡便に取得する手法として有用であることを示すことができた。本研究の最終目標であるペレット溶発雲中の局所電子密度の評価は今後の課題となってしまったが、適切な分光フィルターを選択することで、その達成が期待される。
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