磁化プラズマ中を伝播する大振幅波と粒子の相互作用により生起する物理現象について、理論と計算機シミュレーションによる研究を進めている。今日までの理論および粒子シミュレーション研究により、磁気音波衝撃波による様々な粒子加速機構が発見されているが、本研究では、それらの加速機構が、加速器などの工学的応用が可能なパラメータ範囲において利用できうるかどうか明らかにすることを目指している。本年度は、その初段階として、磁化された背景プラズマに入射されたイオンバンチが誘起する電磁場、及び、その電磁場による粒子加速現象について、空間1次元速度3次元の相対論的電磁粒子コードを用いたシミュレーションにより調べた。その結果、空間的形状がガウス分布状のイオンバンチが誘起する電磁場は、磁気音波ソリトン中の電磁場と、非常に似通っていることがわかった。また、イオンバンチが、外部磁場に対して斜め方向に進行する場合には、磁力線方向の電場が生じることもわかった。 シミュレーションでは、さらに、この誘起された電磁場に対して、陽電子バンチを磁力線方向に入射し、陽電子が加速されうるかどうか観測した。その結果、磁力線方向の電場により、一部の陽電子が強く加速(Lorentz因子の値は50程度)されることがわかった。その加速機構は、磁気音波衝撃波による陽電子加速の機構と同様のものであると考えられる。 また、本年度も、これと並行して、空間3次元の相対論的電磁粒子コードの開発を進めた。本コードでは、並列処理言語のひとつであるHigh Performance Fortranを用いているが、その演算性能の比較検討のために、MPIを用いた並列化も進めた。本コードを用いた3次元シミュレーションにより、大振幅波の構造形成(自己組織化)過程の解明や、3次元的な構造に起因する新たな加速機構の発見等を目指していく予定である。
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