本研究では先ず速いイオンの挙動を計測するために、従来の計測器より10-100倍程度速い時間分解能を有する、高速荷電交換再結合分光装置を改造し、測定精度を改善する。これを用い、Edge Localized Mode(ELM)間のプラズマ周辺部の密度、イオン温度、並びにプラズマ回転分布の同位置・同時計測を行う。これら得られたデータにより周辺輸送障壁の崩壊と回復のダイナミクスの物理機構の解明、並びに周辺輸送障壁回復時の輸送・電場/回転・圧力の相関を詳細に導出し、輸送改善の因果関係と空間構造を決定する機構を解明する事を研究目的としている。 今年度は、本研究計画を基に、 1.初年度の準備・基礎研究に基づく高速荷電交換再結合分光装置を、更に整備備品費を用いて、計測器の要となる干渉フィルターの最適化と計測点の増設により、周辺輸送障壁からコアに亘る計測範囲、領域ともに広いダイナミックレンジでのイオン温度とプラズマ回転速度計測を可能にした。 2.また、JT-60既存の実時間処理計算機と組み合わせることで、NBをアクチュエータとしたイオン温度実時間制御を可能にし、実際にイオン温度の実時間計測、及び制御に成功した。 3.また、輸送特性やELM等のMHD安定性を決定する重要なパラメータであるプラズマの回転についてもその駆動機構や運動量輸送を調べ明らかにした。 以上の研究成果をまとめ、旅費を用いてつくばで開催された国内及び国際学会、イタリアのローマで開催された「The 33rd European Physical Society Conference on Plasma Physics」、中国の成都で開催された「The 21th IAEA Fusion Energy Conference」で発表し、論文「Transactions of Fusion Science and Technology」、「Effects of ripple loss of fast ions on toroidal rotation in JT-60U」、「Driving Mechanism of Toroidal Rotation and Momentum Transport in JT-60U」に公表した。
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