[1]数値基底関数のためのTDMCSCF方程式系とその計算アルゴリズムの開発 解析的基底関数展開に基づいた計算アルゴリズムでは、一電子軌道関数の時間発展は、軌道関数の総数(占有軌道+非占有軌道)の次元を持つ行列の逆行列を逐次計算することで求められる。研究代表者は、数値軌道関数の時間発展方程式を、与えられた占有軌道関数の総数(《全軌道数=grid point数)の次元を持つ行列に対する演算で表現した。これによって一体演算子、二体演算子の明確な分離が可能となり、軌道関数の非線形運動方程式の効率的な解法を構築できた。 [2]水素分子にターゲットを絞った計算プログラムの作成 強光子場中にある水素分子の電子ダイナミクス計算用のプログラムを作成した。技術的な問題点としては、高精度の数値基底関数の準備と数値的プロパゲーターの構築があった。基底関数は、一般化円柱座標を使った、いわゆる双対変換を用いて表現した。双対変換の導入によって、数値計算の効率化と一体演算子の精確な評価が可能となった。二体クーロン積分評価部では、計算の効率化を図るためにクーロン積分核の固有値分解法を考案し実装した。また、交換ポテンシャル項の直接的な評価を避けるアルゴリズムを考案し、軌道関数の運動に結合したCI係数に対する運動方程式との相互関係を明確化した。 [3]水素分子のアト秒電子ダイナミクスの計算、厳密解等との比較 開発した計算プログラム使って、高強度近赤外サブフェムト秒レーザーを使った水素分子の電子ダイナミクスの計算を行った。計算結果を数値的厳密解と比較することで、本手法の有効性を実証した。また、計算精度やプログラム全体のコーディングに関して改良すべき点を明らかにし、一般の二原子分子における多電子ダイナミクス汎用計算プログラム開発のための技術的問題点を明らかにした。
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