研究概要 |
"光増感剤にラジカルを用いた金属錯体のエネルギー移動解明と新規発光理論の構築"の研究を行う上で、平成17年度はラジカル錯体の合成をおこなった。金属はNd(III),Yb(III),Eu(III)を用い、ラジカルには安定なニトロキシドラジカルであるNIT2py,NIT2imH,NIT4imH,IM2py,IM2imH,IM4imHを用いた。Nd-NIT2imH錯体においては溶液で12%という現在世界で最高の発光量子収率を得た。現在、詳しい光物性の測定、解析を試みているところである。 次の展開として視野に入れているのがホストを用いたナノハイブリッドである。非常に弱いδ-であるラジカルは金属、特に希土類金属イオンに配位しにくいという問題点がある。ナノ細孔をもつホスト例えばゼオライトを用いて分子同士を近傍に存在させることにより、ラジカルから発光種へのエネルギー移動を可能にし、発光を実現しようと考えた。 その前段階として配位性のない有機物(4-アセチルビフェニル:ACBP)と希土類イオン(Eu(III),Tb(III))をゼオライト細孔内に導入し、エネルギー移動が起こるかを検討した。その結果、ACBPを励起するとエネルギー移動が起こり、Eu(III),Tb(III)の発光が観測された。 このハイブリッド系は、RGB色を、イオン導入量などにより変化させることが可能であり、さらに励起波長変化や温度変化によりRGB色が変化するという特異的な系の構築にも成功した。この研究は世界的にも注目されAngew.Chem.Int.Ed.に受理されただけでなく、Nature MaterialのHighlight(4月)への掲載も決まっている。 次年度はラジカル錯体の光物性の解析に加え、このラジカル錯体をゼオライト細孔内にship-in-bottle合成しラジカルハイブリッドの構築を図る。
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