研究概要 |
"光増感剤にラジカルを用いた金属錯体のエネルギー移動解明と新規発光理論の構築"の研究を行う上で、平成18年度はラジカル錯体を含めたナノハイブリッド発光素子の構築とエネルギー移動解析をおこなった。ホストには1.3nmのナノ細孔を有するゼオライト(FAU)を選択し、ゲストには、増感分子と発光種を選択し、ゲスト間を近距離固定化することによって高効率なエネルギーを経た発光増感系の構築をおこなった。増感分子には、ラジカル(NH2imH, NIT2py, IM4imH, IM2py)、化合物半導体(CdS)、錯体(Ir錯体)、有機分子(acbp, bzp)を選択し、発光種には長寿命、色純度の高い希土類イオン(Eu(III), Tb(III), Yb(III), Nd(III))を用い、それぞれをナノ細孔内に気相法と液層法の2つの手法で導入を行った。得られたナノハイブリッド発光素子において、増感分子励起で発光種からの発光が観測された。これは、通常ではエネルギー移動しない分子が、ナノ細孔に近距離固定化することによりエネルギー移動が起こったためと考えている。 また、増感分子、発光種のゼオライト細孔への導入量の制卸も可能になり、分子間による消光を抑え、最も高効率な発光が得られる系の提案ができた。 さらにこの系において、エネルギー移動速度定数を算出し、ハイブリッド系のエネルギー移動速度定数は一般の増感発光系に比べ、小さい値を示すことが明らかになった。これはエネルギー移動する際のエネルギー障壁に関連すると考えられ、次年度は熱力学定数を算出し検討する。
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