研究実施計画に従い、今年度はまず、(1)紫外極短パルスの位相変調光学系と(2)変調光の位相構造を調べるためのSPIDER装置の製作をおこなった。光源として、増幅したチタンサファイアレーザー光により励起した非同軸光パラメトリック増幅器を用い、その出力(10〜20フェムト秒)を第二高調波に変換して極短紫外パルス光を得た。この紫外光の位相変調のために、回折格子と高反射鏡二枚から成るいわゆる4f光学系を組み、そのフーリエ面に角度制御した石英板48枚(厚さ1mm)を横一列に並べて変調光学系を構成した。石英板全体に波長分散した紫外光スペクトルが入射するように、回折格子の刻線数を2400gr/mm、凹面反射鏡の焦点距離を400mmと最適化した。変調器全体としてのエネルギー透過率は約20%であった。正確な4f光学系となるように回折格子-凹面鏡間隔を精密に調節し、4f光学系を通ることによるパルス幅の広がりがないことを自己相関測定により確認した。 次に、紫外光のスペクトル位相を測定するためのSPIDER装置を製作した。この装置では、増幅した800nm光を高分散ガラスに通して発生させたチャープパルスをゲート光として使用した。ゲート光と紫外光との間の差周波光を発生させ、そのスペクトル干渉フリンジの観測から位相情報を得ることができた。このSPIDER装置とポンプ・プローブ分光装置の試料位置を光源側から見て等距離に配置し、同等の光学素子を用いた光学系を構成することにより、試料位置における励起光の位相構造を正確に評価できるように工夫した。この装置により数Hzのアップデート率での位相構造のリアルタイム表示を可能とした。
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