本研究は金属内包フラーレンと有機ドナー分子との分子間相互作用を利用した磁性-伝導ハイブリッド型超分子の構築を目標としている。金属内包フラーレンは金属原子から炭素ケージへの電子移動により、空フラーレンとは異なる新規な電子的特性を持つ。その結果、空フラーレンよりも優れた電子受容性、供与性を示し、さらに磁性化、反磁性化の制御も容易である。金属内包フラーレンと有機ドナー分子との複合系は、金属内包フラーレンが持つ非常に高いHOMOと低いLUMOに由来する高い導電性と磁気的な分子間相互作用による磁性特性の両方の出現が期待できると確信する。 平成17年度は、はじめにアーク放電法によってLa内包フラーレン含有すすを大量合成し、最近申請者らが開発した電解法を利用した新規な金属内包フラーレンの大量分離法を用いて、常磁性La@C_<82>の分離精製を行った。次に精製したLa@C_<82>と大環状化合物との溶液中での挙動を以下の方法で検討を行った(J. Am. Chem. Soc. in press.)。 La@C_<82>のトルエン溶液に1等量のアザクラウンエーテル18N6を加えると黒色の沈澱を生じた。この沈澱はニトロベンゼンに可溶であり、vis-NIRスペクトル測定を行ったところ、La@C_<82>由来の1010nmの吸収極大は観測されず、La@C_<82>アニオンに一致する934nmの吸収極大が観測された。更に^<13>C NMR測定でLa@C_<82>のアニオン体と帰属できるシグナルが観測された。また、ニトロベンゼン中18N6存在下、La@C_<82>のEPR測定を行ったところ、18N6の量に応じてLa@C_<82>由来のオクテットシグナルの減少が観測された。これらの結果から、La@C_<82>は18N6と電子移動を伴いながら強く錯形成していることが明らかとなった。
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