研究概要 |
様々な金属塩と3-オキソブチリデンアミナト配位子との錯形成についてまず検討を行った。その結果Cu, Ni, Pd, Fe, V, Ti, Al, Znなどの金属塩に対して新たな錯体が得られた。現在、X線結晶構造解析による立体構造の決定並びに新たな触媒的不斉合成反応への検討を行っている。一方、Rh, Ga, Pt, Pb, Snなどの金属はSalen錯体合成と同条件下では錯形成せず、錯体生成の条件をさらに検討している。 一方、鉄やコバノレトのSchiff塩基錯体はジアゾ酢酸エステルとオレフィンとの不斉シクロプロパン化反応を触媒することを既に報告している。今回、鉄-ポルフィリン錯体とコバルト-ポルフィリン錯体を触媒とするシクロプロパン化反応の機構について詳細に密度汎関数による解析を行った。その結果コバルト(II)-ポルフィリン錯体を触媒とする場合には、N-メチルイミダゾールが軸配位子として作用するとシクロプロパン化の活性化エネルギーが大きくなるのに対して、鉄(II)-ポルフィリン錯体を触媒とする場合には、逆に活性化エネルギーが小さくなることがわかった。鉄(II)-ポルフィリン錯体はチトクロームP_<450>のモデルとして、また、コバルト(II)-ポルフィリン錯体はVitamin B_<12>モデルの1つとして軸配位子の効果について盛んに研究が行われている。中心金属やスピン状態により軸配位子の効果が逆転するという結果は遷移金属シッフ塩基錯体の設計を行ううえで興味深い知見であると考えられる。
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