研究概要 |
分子内に高い不斉自己触媒活性部位を4つ有するSSSS体のテトラキス(ピリミジン)テトラアルカノールを不斉自己触媒として用い、4つの不斉中心を1回の反応で構築可能な不斉自己触媒反応が高エナンチオ選択的に進行することを見出した。すなわち、99.5%ee以上のSSSS体を触媒として用い、不斉自己触媒反応を行ったところ、異性体比SSSS/SSSR/SSRR/SRRR/RRRRが82/11/6/<1/<1鏡像体過剰率>99.5%eeのテトラキス(ピリミジン)テトラアルカノールが生成物として得られた。さらなる反応性、エナンチオ選択性の向上を目指し、中心骨格のアルキル鎖長を伸張し、ピリミジン部位の自由度を向上したテトラキス(ピリミジン)テトラアルカノールおよび対応するテトラアルデヒドを合成した。得られた99.5%ee以上のSSSS体テトラマーを不斉自己触媒として用い、対応するテトラアルデヒドへのジイソプロピル亜鉛の付加反応を行ったところ収率46%、異性体比SSSS/SSSR/SSRR/SRRR/RRRR=94/6/<1/<1/<1、鏡像体過剰率>99.5%eeにて自己触媒と同様の絶対配置を有するSSSS体が効率的に得られた。中心骨格のアルキルケイ素鎖を長くすることにより反応性および立体選択性の飛躍的な向上が観察された。さらに触媒として異性体比SSSS/SSSR/SSRR/SRRR/RRRR=7/25/37/25/6、鏡像体過剰率6%eeのテトラマーを用い,対応するテトラカルバルデヒドとジイソプロピル亜鉛との不斉イソプロピル化反応を行った結果,生成物が収率40%,鏡像体過剰率9.2%eeの生成物が得られた。さらなる不斉の向上を伴う連続的不斉自己触媒反応を5回行ったところ最終的に鏡像体過剰率97%ee、異性体比SSSS/SSSR/SSRR/SRRR/RRRR=70/20/7/3/1にまで向上したテトラキス(ピリミジン)テトラアルカノールが得られた。初期段階では5種の異性体すべてが存在していたが、連続的不斉自己触媒反応により最終的にはSSSS体が2000倍以上に自己増殖した。以上テトラキスピリミジルアルカノールを用いる不斉自己触媒反応において4つの不斉中心を1回の反応で構築することが可能な不斉自己触媒反応を見出した。さらに低鏡像体過剰率の触媒を用い連続的に反応を行うことにより,顕著な不斉の向上を伴う不斉自己触媒反応を実現することに成功した。
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