研究概要 |
本年度は、1,[{Ag_2(μ-X)_2(PPh_3)}_2(L)_n]錯体の発光性の解明 2.{Cu_2(μ-X)_2}骨格におけるCu-Cu相互作用についての検討、を中心に研究を進めた。1.に関しては、これまで合成したbpy, bpe, pyを配位子どした錯体に加え、bpa(ビスピリジルエタン),ampym(アミノピリミジン), ampyz(アミノピラジン)錯体の合成を行った。同形の構造を持つ銅錯体では、類似錯体が比較的容易に合成できたのに対し、銀錯体ではAg-N結合が相対的に弱く、塩基性度の高い配位子を用いる事により一連の錯体の合成を可能とした。これらの錯体の発光性について、その発光極大、発光寿命を室温から低温にわたり詳細に検討を行った。対応する一連の銅錯体は幅広のMLCT性の燐光を示したのに対し、Ag錯体は、配位子に依存して、蛍光、幅広の燐光、振動構造を持つ燐光と、様々な発光を示し、同系列の配位子でも発光に関与する励起状態が異なることが明らかとなった。発光性と配位子の比較から、Ag錯体の発光に関与する励起状態はMLCT準位ではなく、XLCT、配位子内π-π^*遷移に帰属出来ることが明らかとなった。2.に関しては、1,8-ナフチリジン錯体を合成し、金属間距離が2.6Åと短い場合でも、MLCT性の発光を示すことを明らかにした。この錯体の分子軌道計算により、空軌道としてCu-Cu相互作用を持つ励起状態は存在するが、その準位より安定なエネルギーにMLCT性の励起状態があるため、金属間距離だけではCu-Cu相互作用のある発光が見られないことが明らかとなった。また、Cu錯体の発光性については、単核錯体の発光性についても研究を進め、[CuX(PPh_3)(3-benzoylpyrodome)]を合成し、この錯体でも^3MLCT励起状態からの発光性が観測されることを明らかにした。
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