本研究の目的は、光感応性置換基を導入したシクロペンタジエニル誘導体等の配位子を持つ新規低原子価ウラン錯体を合成し、それらの光化学的性質を明らかにすることである。具体的には、ランタニドにはないウラン(アクチニド)に特有な結合性のf軌道からの発光を機能化し、分子性発光材料開発の基盤構築を目指している。本年度は、研究実施計画(平成17年度)に従い、低原子価ウランに対する優れた配位子として知られているシクロペンタジエニル(Cp)、ペンタメチルシクロペンタジエニル(Cp^*)やトリアザシクロノナン(TACN)への光感応部位の導入を試みた。その結果、光感応性置換基としてナフタレン基を導入した新規Cp^*誘導体配位子については、その大量合成法を確立することができた。また、この配位子を用いて、ウラン錯体の合成における前駆体(カリウム塩)、さらには光化学的性質を比較する上で重要なランタニド(サマリウム)錯体の合成およびそれらの単結晶X線構造解析に成功し、分子構造を明らかにすることができた。一方、得られた化合物の光化学特性をUV-Visスペクトルおよび蛍光スペクトルの測定により評価した。ナフタレン基が導入された化合物はいずれも光励起により発光することが明らかとなり、光機能特性を評価する際の指標として活用できることがわかった。これらの成果は、平成17年9月(新潟)に行われた弟55回錯体化学討論会で発表した。また、本研究遂行に伴い派生した研究成果を4報の学術論文として発表した(次ページ参照)。
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