研究概要 |
金属の原子間に存在する小さな"隙間"空間は金属-水素の化学的な相互作用によって水素原子のポテンシャルを大きく減少させるため、大きなエネルギーを有する水素を常温常圧で貯蔵することが可能である。金属は直径数十nmのナノ粒子になるとバルクにはない特異な性質を示すことが知られている。金属ナノ粒子に水素圧力を印加すると、バルクでは高温あるいは高水素圧力下でしか観測されない構造がナノ粒子では出現し、水素吸蔵能が変化する可能性がある。申請者らは高密度水素吸蔵特性の発現を目指して、Pdをコア、PtをシェルとするPd/Ptコア・シェル型ナノ粒子の水素吸蔵特性に関する研究を行ってきた。その結果、Pd/Ptコア・シェル型ナノ粒子はコアのPdナノ粒子よりも多量に水素吸蔵することが明らかとなった。本年度は、Pd/Ptコア・シェル型ナノ粒子の水素圧力下in situ粉末X線回折測定を行い、Pd/Ptナノ粒子の構造変化過程からその水素吸蔵メカニズムを解明することを目的とした。 作製したPd/Ptナノ粒子のTEM写真からコア部分のPdナノ粒子に1,2および4原子層程度のPtシェルに被覆されたPd/Ptナノ粒子が得られたことがわかった。1層の試料について、水素加圧下におけるin situ実験を行った。303Kの定温で水素の一気圧までの加圧および減圧の過程では、回折パターンにはほとんど変化が観られなかった。一方、373Kに昇温して水素の加減圧すると、コア部に用いたPdナノ粒子とは異なる回折パターンが得られ、Ptが1層のみのコア・シェル型ナノ粒子において、水素に誘起されるPd/Ptナノ粒子特有の構造の変化が生じることが確認された。Pd/Ptナノ粒子の水素吸蔵特性の変化はこのような構造変化と関係があり、Pdナノ粒子の水素に対する親和性はPtシェルにより大きく変化すると考えられる。
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