研究概要 |
近年、クリーンなエネルギー資源である水素を燃料とした燃料電池が注目を集めており、その高効率化の鍵を握るプロトン伝導体に関する研究開発が各国で活発に行われている。最もよく知られたプロトン伝導体であるNafion^<【○!R】>膜などのパーフルオロスルホン酸系ポリマーは、室温・加湿下において、1×10^<-1> Scm^<-1>程度の伝導率を示す。しかしながら、この値を超えるほどの"超プロトン伝導体"の多くは現在、研究段階にあり、未だ実用化されてはいない。研究代表者は、既にポリマー被覆金属ナノ粒子において、Nafion^<【○!R】>膜に匹敵するほどのプロトン伝導性を見出しており、有機-無機ハイブリッド材料が高いポテンシャルを有することを明らかにしている。本研究では、被覆ポリマーとして、資源が無尽蔵な生分解性バイオポリマーである多糖類に着目した。κ-カラギーナンは、β-D-galactoseと3,6-anhydro-α-D-galactoseのダイマーユニットで構成されるヘテロ多糖で、側鎖にスルホン酸基をもつ藻類由来のプロトン伝導体である。この多糖類を被覆ポリマーに用いて、新規なポリマー被覆金属ナノ粒子を合成し、そのプロトン伝導性について評価を行った。その結果、粒径4nm程度のカラギーナン被覆白金ナノ粒子がσ_p>1×10^<-2>Scm^<-1>程度の高いプロトン伝導率を示すことが明らかとなった。試料中にプロトン以外の可動イオンは存在しないことから、伝導キャリアはスルホン酸基から解離したプロトンであり、吸収された水分子を介して伝導するものと考えられる。また、交流電気伝導率のアレニウス・プロットは、プロトン移動が熱活性型であることを表しており、その活性化エネルギーは、それぞれE_a=0.323eVであることが分かった。
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