本年度は、前年度までの結果を基に、プローブデザインを更に改善した新規アプタマー型プローブ、プローブIIIの開発を行った。具体的には、ATP認識DNAアプタマー(apt)(27mer)の5'末端に補足配列(add)(5mer)を付加したDNA(add-apt)に対し、相補的一本鎖DNA(comp)(12mer)をハイブリダイズさせ、add-aptの5'末端にドナー蛍光基、compの3'末端にアクセプター蛍光基を標識したものをプローブIIIとして設計し、その性能について検討した。まず、プローブIIIに対してArpを添加したところ、添加に伴う蛍光強度比I_D/I_A(I_DとI_Aはそれぞれドナー蛍光基とアクセプター蛍光基の蛍光強度)の増大が観測された。これは、Arpの認識に伴いプローブIII中の相補鎖DNAが解離し、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が解消されたためであると考えられる。蛍光強度比の変化と添加したArp濃度との間には相関が認められた。また、プローブIIIは、GTP、UTP、CTPには有意な蛍光応答を示さず、優れたヌクレオシド選択性を有していることが明らかとなった。更に、add-aptの3'末端に対して細胞膜透過性ペプチドを結合したプローブをRaw264細胞に適用し、蛍光顕微鏡観察を行ったところ、本プローブが細胞内に良好に導入されている様子を確認することができた。以上の結果から、プロ-ブIIIは新規Arp計測用蛍光プローブとして有用であると考えられ、本研究目標であるアプタマーを分子認識素子とした細胞内導入用蛍光プローブの開発に成功することができた。
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