研究概要 |
炭素-炭素二重結合に対する触媒的不斉ヘテロビスメタル化の開発と、これにより得られる新規キラル反応剤の不斉合成への応用を目的として研究を実施した。平成17年度に得られたアレンの不斉シリルホウ素化の知見を基にして、meso-メチレンシクロプロパンのシリルホウ素化不斉非対称化を詳細に検討した。パラジウム触媒上の光学活性リン配位子およびシリルボランの構造について最適化を図ったところ、2-ビス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィノ[1,1']ビナフチルを配位子とし、(メチルジフェニルシリル)ピナコールボランを用いることで、最も高いエナンチオ選択性が発現することが明らかとなった。興味深いことに、この配位子とシリルボランの組み合わせは、アレンの不斉シリルホウ素化の最適条件と同一であり、2つの反応の触媒サイクルにおける不斉発現段階の類似性が示唆された。様々な基質に対するシリルホウ素化不斉非対称化を検討した結果、5-8員環と縮環したmeso-メチレンシクロプロパンでは90-91%の、非縮環型の基質では81%のエナンチオマー過剰率で、それぞれ対応する光学活性2-ボリル-4-シリル-1-ブテン誘導体を得ることに成功した。得られた生成物は、ボリル基選択的な酸化により光学活性なβ-シリルケトンに、ホモログ化によりアリル型ボランに変換した後アルデヒドと反応させることにより光学活性なホモアリルアルコールにそれぞれ誘導でき、キラル反応剤としての有用性を明らかとすることができた。また、平成17年度の段階では困難であった1,3-ジエンの不斉シリルホウ素化をより穏和な条件下再検討するために、シリルボランの反応性改善に取り組んだ。ケイ素上にハロゲンやアルコキシ基、アミノ基を有する新規シリルボランを合成し検討を行った結果、ケイ素上にクロロ基を有するシリルボランが1,3-ジエンへの付加に高い活性を示すことを見出した。
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