研究概要 |
炭素-フッ素結合は有機化合物の結合のなかでも最も不活性な結合のひとつであり、多くの試薬に対して安定である。我々は既に、遷移金属触媒を用いた第1級フッ化アルキルとグリニャール試薬とのクロスカップリング反応を見出している。今回、私はアルキル、アルケニル、アルキニルなどの炭素官能基および種々のヘテロ原子官能基(Cl,Br,I,H,OPh,SPh,SePh,TePh,NEt_2)を有する有機アルミニウム試薬とフッ化アルキルとの反応をヘキサン溶媒中で行うことにより、フッ素が有機アルミニウム試薬の種々の官能基により効果的に置換されることを見出した。^nOct-F(1mmol)とEt_3Al(1.2mmol)との反応ヘキサン溶媒中、室温で90分間行ったところ、n-decaneが90%、オクテンが1%、カップリング生成物の位置異性体が2%、の収率で生成した。同条件下、溶媒としてヘキサンの代わりにジクロロメタンを用いて反応を行うと、オクテンと位置異性体の生成量が増加した。一方、THFなどのエーテル系の溶媒を用いると反応は全く進行しなかった。ヘキサン溶媒中、アルケニル基やアルキニル基を有するアルミニウム試薬とフッ化オクチルとの反応ではフッ素が置換されたオレフィンやアセチレンがそれぞれ高収率で得られた。ハロゲン化アルミニウム試薬としてEt_2AlCl、Et_2AlBrやEt_2AlIを用いた場合、対応するハロゲン化アルキルがそれぞれ良好な収率で得られた。また、^iBu_2AlHとの反応ではオクタンが得られ、^iBu_2AlOPhの様なカルコゲン元素(O,S,Se,Te)を有する有機アルミニウム試薬の反応ではそれぞれ、エーテル、チオエーテル、セレニド、テルリドが良好な収率で生成した。また、^iBu_2AlNEt_2との反応ではアミンが得られた。
|