研究概要 |
グラファイト、カーボン微粒子、カーボンナノチューブなどの"炭素"に担持されたパラジウムは、優れた水素化触媒として、実験レベルのみならず、工業レベルにおいても多用されている。さらに近年では、グラファイトとパラジウム金属のどちらも水素を大量に吸収する性質を持つことから、炭素-パラジウムを複合させたグラファイト層間化合物は水素吸蔵材料としても注目されている。これらの優れた特性に関連して、多数のパラジウム原子が、"炭素"上に結合した場合、どのような特異的構造や電子状態が形成されるのかに大きな興味が持たれる。炭素上にシート状の2次元金属構造が形成されたことを分子レベルで確認した例はパラジウムのみならず、全金属種を通じてまだ報告されていない。そこで、本研究では、分子レベルでこのことを実証すべく、パラジウムの2次元シートを"炭素配位子"上に持つ分子の創製を目指して研究をおこなっている。 平成17年度では、「サンドイッチ合成法」に基づいて本申請者が最近合成したビスペリレンパラジウム4核錯体(JACS,2003)を用いて、4核パラジウムの骨格異性化反応について検討してきた。本申請者が最近報告したビスペリレンパラジウム4核錯体では、サンドイッチ構造が作り出す電子構造によって1次元鎖状パラジウム構造が形成され、安定に保たれていると考えられる。そこで、一方のペリレン配位子のみを他の不飽和炭化水素配位子によって配位子交換させ、パラジウムの形状を鎖状から菱形へ変換し、初めての2次元パラジウムシートを持つ有機金属錯休を生成させることを目指して種々検討をおこなっている。現在までに、シクロオクタテトラエン(COT)が、直鎖状4核パラジウム骨格を菱形に形状変換させる配位子として有効に働くことを見出しており、現在、X線構造解析などの分析手段を用いてこれを証明することを目指している。
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