研究概要 |
実用的な不斉触媒の設計に際しては適切な不斉環境の構築と同時に触媒の耐久性の向上が重要な課題である。近年の研究からN-ヘテロサイクリックカルベン(NHC)配位子は様々な金属イオンと安定な錯体を形成することが知られてきた。このNHC配位子を適切に不斉化することができれば高耐久性を備えた不斉触媒の開発が可能であると考えられる。そこでキラルな4,5-ジヒドロイミダゾリウム骨格を中心骨格とするNHC配位子の開発および同配位子を用いた触媒的不斉共役付加反応の検討を実施し以下の様な結果を得た。 新規NHC配位子、N-o-(disubstitutedphoshinyl)benzyl-N'-aryl-4,5-dihydro-4,5-diphenylimidazolium塩類を亜リン酸ジエチルから四段階にて合成するルートを開拓した。さらにこれらの光学活性なイミダゾリウム塩類を用いて銅(TT)NHC錯体を合成し、それらを触媒に用いたα,β-不飽和カルボニル化合物へのジエチル亜鉛の共役付加反応を検討した。従来法によるこの付加反応の立体制御には-50度から-10度という低温条件が必要であった。しかし、今回開発を行った銅(II)NHC錯体を用いた反応ではトルエン中室温で85%eeと良好なエナンチオ選択性が得られた。さらにテトラヒドロフラン中においては0度で90%eeの高選択性を示した。これらの結果は本触媒の可能性を示すものであり、現在触媒の改良をさらに検討中である。
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