a-pyrone類は多くの天然物、生理活性物質に含まれる重要かつ基幹的な化合物であり、含窒素複素環化合物や種々の芳香族化合物の合成中間体としても重要であることから、多彩な置換様式を有するa-pyroneの合成法の開発は有機合成化学における重要な研究課題の一つである。本研究では、カルボニル化に基づく[3+2+1]型環化付加反応による新しい型のα-pyrone合成法の開発を目的とするが、本年度は種々の遷移金属錯体触媒を用いた反応条件のスクリーニングを行った。その結果、Ru_3(CO)_<12>触媒存在下、フェニルシリルアセチレンとビニルケトンと一酸化炭素との反応を行ったところ期待した[3+2+1]型環化付加反応が進行し4置換α-pyroneが良好な収率で得られることを見いだした。一方、[Cp^*RuCl_2]_2を触媒とし、アルキル2置換アセチレンを一酸化炭素加圧下、メチルビニルケトンと反応させたところ、[3+2+1]型環化付加反応は全く進行せず、アセチレン、オレフィン、および2分子の一酸化炭素との[2+2+1+1]型付加環化反応が進行し、ヒドロキノン類が良好な収率で得られることを見いだした。この型の反応はこれまで一例しか報告例がなく、適用可能なオレフィンはノルボルネン誘導体に限られていた。[Cp^*RuCl_2]_2触媒を用いる本系においては、アクリル酸エステル、アクリル酸アミド、アクリロニトリル等種々の電子欠損オレフィンが適用可能であり、官能基を有するヒドロキノン類合成の有用な方法であることを明らかとした。
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