研究課題
本研究では、高精度量子化学計算と合成実験の緊密な連携によって、電子構造制御型二核金属触媒を開発することを目的としている。現在、二つの窒素原子間に電子が非局在化する特異な共鳴構造を有し、置換基を換えることによって二座配位子や架橋配位子として働くことが知られているアミジナート配位子に着目して研究を推進している。今年度は、(1)置換基の適切な位置にルイス塩基部位を導入した金属アミジナート錯体の合成と触媒機能の検討、及び関連研究として(2)Ruジオキソレン錯体の電子状態に関する理論的検討について実施した。(1)については、二座配位子として作用するアミジンと側鎖にルイス塩基部位を有するアミジン、さらにその等価体であるアミドを調製し、塩基存在下で[(p-Cymene)Ru(II)Cl_2l_2とトルエン溶媒中80℃に加熱することで、対応するRu錯体を合成した。さらにそれらの触媒機能について検討するために、Knoevenagel反応への適用を試みところ、側鎖にルイス塩基部位を有するRuアミジナート錯体は低活性であったものの、その類縁体であるRuアミド錯体は高い触媒機能を有することを見出した。(2)については、Ruジオキソレン錯体の電子状態について理論的解析を行い、ジオキソレン配位子の置換基を修飾することで、Ruの酸化状態を制御することが可能であることを明らかにした。即ち、ジオキソレン配位子が電子求引基を有する時、Ru-ジオキソレン錯体はRu(III)-カテコール錯体の性質を示し、電子供与基を有する時、Ru(II)-セミキノン錯体の性質を示すことを見出した。これは電子求引基のために、Ru-ジオキソレン錯体全体に不対電子が非局在化するためである。
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