研究概要 |
本研究ではリビングラジカル重合の一種である可逆的付加-開裂連鎖移動(Reversible Addition-Fragmentation Chain Transfer ; RAFT)型重合法を用いて、両末端反応性オリゴマー並びに末端反応性グラフトポリマーを開発することを目的としている。本年度は、新規な両末端反応性RAFT剤の開発から研究を開始した。RAFT剤の反応性置換基としては、ウレタン化など幅広い応用が期待できる水酸基を持つものを合成する。まず最初にモデル化合物(塩化ベンジル)を用いた合成検討の結果、室温・空気存在下で市販試薬を精製せずに用いても定量的にRAFT剤を合成できる手法の開発に成功した。その合成に際しては塩基が重要な役割を果たすが、特に炭酸セシウムが非常に有効であった。次にその手法を応用して合成した両末端反応性RAFT剤を用いてスチレン、アクリル酸エチルのリビングラジカル重合を試みた結果、どちらに於いても分子量分布の狭いポリマー(一例としてスチレンポリマー(Mn:16,500)のMw/Mn=1.15;アクリル酸エチルポリマー(Mn:28,500)のMw/Mn=1.14)を得ることに成功した。また、反応の経時変化による収率と平均分子量の変化を観察することにより、新規RAFT剤を用いた重合がリビング性を持つことが確認された。更にスチレンオリゴマー(Mn:2,250,Mw/Mn=1.15)を合成して^1H NMR並びに元素分析を行った結果、オリゴマーの両末端に定量的に反応性置換基が導入されていることが確認された。これらの重合に際しては、非プロトン性の極性溶媒中で行う条件が最も有効であった。 以上より、新規な両末端反応性RAFT剤の簡便な合成並びに両末端反応性オリゴマーの開発に成功した。
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