研究概要 |
1,2-ジアミノシクロヘキサン型キラルホスホルアミドをメチレン基を介して芳香環上に導入したポリマー(1)を不斉ルイス塩基触媒として用いた、アリルトリクロロシランによるベンズアルデヒドの不斉アリル化反応においては、対応する低分子触媒よりも収率が2.4倍(35→84%)、エナンチオ過剰率(ee)は1.4倍(45→63%ee)となる。収率およびeeのさらなる向上を目指し、芳香環とホスホルアミド部位との間にスペーサー構造の導入を試みた。スペーサー構造としてピペラジンを有するポリマーを合成し不斉アリル化反応に用いたが、収率は62%、eeは51%eeとなり、1と比較して触媒の活性および不斉選択性は低下する結果となった。つぎに、ホスホルアミドの窒素原子上の置換基の効果について検討を行った。触媒1はメチル基を置換基として有していたが、メチル基の代わりにn-プロピル基を導入したキラルポリホスホルアミド2を合成し、不斉アリル化反応に用いた。その結果、n-プロピル基導入触媒2は1とほぼ同様の触媒活性を示すことが明らかになったが、不斉選択性は56%eeとやや低下した。高分子触媒の再使用を目的として、反応後に反応溶液をキラルポリホスホルアミド1の貧溶媒に投入しポリマーの単離を試みたが、反応時に促進剤として加えているエチルジイソプロピルアミン由来の塩とポリマーの溶解性が類似しているためポリマーの単離は困難であった。また、キラルホスホルアミドモノマーとスチレンとの共重合体を触媒として利用することにより、ポリマー鎖中のホスホルアミド部位含量が触媒活性および不斉選択性に及ぼす影響について調査した。その結果、ポリマー鎖中のキラルホスホルアミド含量が23%まで減少しても、収率およびeeの大きな低下は見られず、高分子効果による二座配位が可能であることが示された。
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