研究概要 |
本研究は,リビングラジカル重合法のひとつであるニトロキシド制御/リビングラジカル重合(NMP)を超臨界二酸化炭素媒体(scCO2)系に適用する世界でも初めての取り組みである。超臨界系では,NMPを不均一系で行うという難しさもある。安定ラジカルとしてはthe nitroxide N-tert-butyl-N-(1-diethylphosphono-2,2-dimethylpropyl) (SG1)を用いた。まずは,所属する研究室でscCO_2中でのリビングラジカル重合(ATRP系)において成功例のある,開始剤と分散安定剤の両方の性質を併せ持つinistabであるpoly(dimethyl siloxane)-based azoinitiatorを用いて検討を進めたが,重合は完結するものの満足のいく分子量分布ではなかった。そこで,次の2系に取組んだ。(1)分散安定剤として市販のpoly(dimethylsiloxane-b-methyl methacrylate) (PDMS-b-PMMA)を,(2)inistabとしてPDMS-b-PSt-SG1を用いる。詳細に検討を進めた結果,分子量分布が1.1-1.4というリビング性を維持した満足ある結果が得られた。電子顕微鏡写真から求めた数平均粒子径は<200nmであり,高い分散安定性が確認された。また,scCO_2中における臨界鎖長は重合度で27であり,今回の検討系では重合率で約10%程度であった。これ以降の重合は,生成した粒子中での不均一系で起こっていると考えられる。興味深いことに,重合速度は均一系の溶液系と同程度で,生成分子鎖数もほぼ等しいものであった。これらの結果から,scCO_2系での分散系NMPでは重合開始ラジカルの発生数が高く,分子量の低い分子鎖にも連載道反応が起きていることが推察された。以上のように超臨界二酸化炭素媒体中においてニトロキシド制御/リビングラジカル重合に成功した。
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