今年度は、ポリビニルピロリドン(PVP)を鋳型として塩化金酸をアルコールによる化学的還元することにより金ナノ粒子を調製した。透過型電子顕微鏡(TEM)およびレーザー弾性散乱によりその平均粒径を評価したところ、約4〜5nm程度であることがわかった。さらに、還元時間により粒子の形状が変化することも紫外-可視吸収スペクトル上に現れるピーク形状の変化から明らかになった。これについては現在、詳細なプロファイリングを行っている。 このようにして調製したPVP被覆金ナノ粒子を以下の手順で電極基板上に積層した。まず、ポリアクリル酸(PAA)を含む水溶液に洗浄済みのITO電極を浸漬し、一定時間保持した後に引き上げてミリQ水で洗浄する。次にITO電極基板をPVP被覆金ナノ粒子水溶液に一定時間浸漬し、引き上げ後ミリQ水で洗浄を行う。この手法により、PAAと金ナノ粒子周囲のPVPとの間に水素結合が形成され、金ナノ粒子の単層修飾が行われることが報告されている。上記交互浸漬を繰り返すことにより金ナノ粒子の吸着層を積層することが可能であり、実際、積層回数とともにITO電極透過UV-VISスペクトル上の金プラズモンバンドの吸光度が増大することからも確認できた。しかし、プラズモンバンドの増大については5層積層で停止し、これ以上の積層は確認できなかった。現在、IRスペクトルからその原因を探っている。 さらに、調製した金ナノ粒子被覆ITO電極に触媒活性を賦与するため、金ナノ粒子表面に異種金属を積層する試みを行った。従来、チオール修飾された金ナノ粒子は表面がチオールで被覆され、反応サイトがほとんど無いが、PVP被覆の場合は、ポリマーとの緩い相互作用のため、異種金属の析出も容易にできる。そこで、最初の段階として、積層電極の電位を硫酸銅溶液中で走査し、銅析出を試みた。その結果、銅のアンダーポテンシャル析出が、観測され、PVP被覆金電極の電気化学的修飾が非常に容易であり、新しいナノ構造を有する電極触媒への展開が期待できることが明らかになった。
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