本年度は、種々のポリマーを鋳型とする白金または金ナノ粒子を電極表面に固定するための最適な組み合わせを明らかにすることに注力した。具体的には、ポリアクリル酸(PAA)のようなポリアニオンを鋳型として調製した白金ナノ粒子、ポリエチレンイミン(PEI)のようなポリカチオンを鋳型として調製した白金ナノ粒子、ならびにポリビニルピロリドン(PVP)に代表される中性のポリマーを鋳型とする白金ナノ粒子および金ナノ粒子を、対応するポリマーとの交互積層を行った。白金ナノ粒子を交互積層した場合には、電気化学測定により、積層数に対する水素吸脱着波の変化から、担持できた白金量を見積もるとともに、酸素還元活性を評価した。一方、金ナノ粒子の場合には、透明基板を用いて、吸光度変化から積層量を評価した。いずれの場合も、10層目あたりから、積層回数と実際の積層量との相関が線形からずれ、表面が次第にラフネスを増大させていくことがわかった。ただし、その度合いには対ポリマーの分子量や構造、親・疎水性にかなり影響を受けることもわかった。また、基板の種類に応じて、前処理を行うことが、安定した積層を行う上で、有用であることもわかってきた。以上の結果については、より系統的な研究の必要性がある。 一方、さらに実際の電極触媒研究と関連づけるために、白金ナノ粒子を担持した触媒粒子の表面をポリマーで処理し、その表面電荷を利用して、サブミクロンスケールの粒子も交互積層法により電極基板表面に固定できることも明らかにしつつある。
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