研究概要 |
Siプリズム上に微粒子構造を形成したPt薄膜に赤外パルスを照射すると表面に垂直な方向にのみ強い赤外電場が形成される。本研究はこの強い光電場を振動誘起表面反応の制御と反応過程の観察に利用しようとするものである。 Pt電極表面にポンプ光を照射した際の吸着分子の変化をピコ秒時間分解観察する中で、電極界面の水分子が加熱されるとその配向が変化して電位が変化し、吸着したCOの振動数が変化する現象を見いだした。本年度は、この振動数変化を利用して、電気二重層界面における溶媒分子の配向変化速度を調べた。 電解質にLiClO_4、溶媒にH_2O,CH_3OH,NH_2CHO,CH_3CNを用いた場合、配向変化の速度はH_2O(250ps)>CH_3OH(150ps)【approximately equal】NH_2CHO(150ps)>CH_3CN(100ps)の順に速くなり、溶媒間に働く水素結合の強さが配向変化速度を支配することが分かった。次に、H_2Oの場合、電解質にLiClO_4,HClO_4,過塩素酸テトラエチルアンモニウム塩(TEA^+ClO_4^-),臭化ブチルエチルアンモニウム塩(TBA^+Br^-)を用いると、強く水和するLi^+,H^+イオンの場合には水の配向変化に200-250psかかるのに、疎水性イオンでできたアルキルアンモニウム塩を使うと、アルキル基が長くなるにつれて150から100ps以下に遅くなった。これは、水和イオンは電気二重層の水分子と強力な水素結合ネットワークを形成して配向変化を遅くするのに対し、疎水イオンは水分子間の水素結合を破壊して配向変化を加速することを意味している。 電気二重層界面の溶媒分子の配向変化速度は電子移動速度や物質輸送速度を決定する重要な役割を果たしているが、ほとんど調べられていない。バルク中の水の配向緩和速度は8ps程度であり、本研究の結果は電気二重層界面における水分子の特異性を示している。
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