シリカメゾ多孔体の持つ規則性ナノ細孔内に、アゾベンゼン(Az)分子を放射状に配置すれば、光異性化に伴い細孔径が可逆的に変化する新規ナノ空間が構築できると考え、研究を行っている。申請時において、(1)シリカメゾ多孔体MCM-41(M41)にp-トリエトキシシリルアゾベンゼンを反応させてAz修飾M41(Az-M41)を調製したこと、(2)Az基は可逆的に異性化すること、(3)これに伴い細孔サイズが変化することを明らかにしていた。本年度は、(1)細孔径の変化幅を大きくするために光異性化効率の確認とのその向上について検討し、(2)細孔内に導入された分子の蛍光挙動が細孔径変化に伴ってどのように変化するかについて検討した。以下、説明する。 (1)Az-M41の光異性化効率の測定およびその向上:UV照射して光異性化させたAz-M41を暗所下でフッ酸処理し、有機溶媒で抽出を行うと、シス体のAz成分を取り出すことができた。これを利用して吸光度測定により異性化効率を求めた。Az修飾量が約1.5mmol/g-M41(約0.9group/nm^2)以下であれば異性化効率はほぼ一定であり40-60%程度であった。また、異性化効率にはM41調製時の焼成温度も影響し、540℃程度が最大となった。以上のことから細孔径の変化幅を大きくするためのAz-M41の最適調製条件をほぼ明らかにした。 (2)Az-M41細孔内に導入された有機分子の蛍光挙動:Az-M41中にメゾスケールの分子サイズを有するmeso-テトラフェニルポルフィリン(TPP)を導入して、光異性化前後で蛍光スペクトルが変化するかどうかを調べたところ、可逆的な蛍光波長のシフト(7nm)を観測した。Az修飾したアモルファスシリカの場合には変化はなかった。このことから、メゾ細孔内のTPPが異性化により立体的な摂動を受けていることを明らかとした。
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