本年度は、静電的相互作用を利用し、有機分子を包接するのに十分な内部空孔を持った水溶性三次元カプセルの構築を行った。カプセルの内部空孔を大きくするためには、Oxacalix[3]areneを基本骨格に持つホスホン酸塩を合成し、アミン塩酸塩との反応で、水溶性三次元カプセルを合成した。カプセル状分子の生成は、分子拡散NMR(DOSY-NMR)、ESI-MSスペクトルによって確認した。得られた水溶性カプセルに対して、水溶性ゲスト分子としてピリジニウム塩およびピラジニウム塩の包接を行ったところ、これらのイオン性ゲスト分子が包接されることが明らかになった。また、中性のゲスト分子としてはトルエンやクメンなどの芳香族炭化水素が包接され、ジメチルフェニルシランやメチルフェニルシラン等のヒドロシラン類が、特異的に包接されることを見出した。さらに、カプセルに包接されたジメチルフェニルシランは加水分解反応が進行することが確認され、この加水分解反応の反応速度は、カプセルの存在下では著しく加速されることが明らかとなった。このようなカプセル内での化学反応の加速は、この水溶性カプセルが水中有機合成反応場としての利用が可能である事を強く示唆する結果でり、本研究成果は第35回構造有機化学討論会、第86回日本化学春季年会で発表すると共に、学術論文に投稿中である。
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