本年度は、昨年度合成に成功したカプセル分子を触媒として利用するために水溶性の向上を検討した。実際にはアニオン性ユニットとなるOxacalix[3]areneを基本骨格に持つボスホン酸塩の置換基にトリエチレングリコール鎖を導入することで、水溶性を向上させた。トリエチレングリコール鎖を導入したホスホン酸塩とアミン塩酸塩との反応でカプセル分子を構築したところ、これまでに合成したエステルが置換したカプセル分子に比べて、水溶性が4倍向上した。カプセル分子の形成は1H-NMR、分子拡散NMR(DOSY-NMR)、ESI-MSスペクトルによって確認した。この水溶性が向上したカプセル分子に水溶性のゲスト分子であるピラジニウム塩の包接を行ったところ、以前のカプセル同様に包接されることが明らかとなった。現在は最終年度に向けてカプセル内での化学反応の探索を行っている。本年度は水溶性カプセルの構築方法として新たにアミジニウム-カルボキシレート塩が利用可能であることを見出し、水中での多成分自己集合カプセルの構築を検討中である。本研究成果は学術論文への投稿準備中であり、第87回日本化学会春季年会で発表すると共に新聞掲載に至った(別様式報告)。
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