半導体量子ドットは量子閉じ込め効果に由来するサイズに依存した光学特性を示すナノ粒子材料として注目を集めている。高輝度な発光特性を示すことから、細胞染色をはじめとしたバイオテクオロジーや、レーザー、LEDなどのオプトエレクトロニクス分野への利用が期待されている。半導体ナノ結晶は種々の合成法により作製されるが、近年、簡便で再現性に富む手法としてCdTeナノ結晶の水性合成法が注目されている。しかし、水溶性CdTeナノ結晶はその表面における保護分子の解離平衡のため、あまり高い発光効率は示さない。研究代表者は、カチオン性の表面保護分子で被覆された水溶性CdTeナノ結晶が、疎水性のイオン液体に効率的に抽出されることを初めて見出した(Chem.Commun.2005)。抽出プロセスにおいて、CdTeナノ結晶はサイズを変えることなくイオン液体中に輸送され、発光スペクトルからナノ結晶の発光特性が2倍程度と大幅に増強することを見出した。さらに、水中と比較して、光照射に伴う、光分解への耐久性がイオン液体中において大幅に向上させることに成功した。このようにイオン液体が発光性のナノ材料にとって優れた媒体となることを初めて実証した。 さらに、重合性のイオン液体を用いることにより上記複合材料の固体化を行った。得られたポリマーコンポジットは高い透明性を有し、紫外光の照射により高輝度な発光を示した。重合前後において発光強度は維持され、水溶液中から比較すると3倍程度の向上が見出され、半導体ナノ結晶の発光特性を損なわないコンポジット化手法として提案された。
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