昨年度は、CdTeナノ結晶がイオン液体中で優れた発光特性を示し、さらに、重合性のイオン液体を用いることで強発光性のコンポジット材料を得ることに成功した。本年度は、イオン液体中におけるCdTeナノ結晶と有機化合物間の電子移動反応を利用した可視光増感光重合システムの構築を行った。 半導体ナノ結晶が、1)大きな吸光係数、2)長い励起寿命、3)波長選択性を有していることに着目し、光ラジカル発生剤(ジアリールヨードニウム化合物)との光誘起電子移動を利用した増感重合を行った。モノマーとして、イオン液体の基本構造を有するモノマー、重合開始剤としてジフェニルヨードニウムPF_6、さらに可視光増感剤としてCdTeナノ結晶を用いた。その結果、可視光照射により本システムが固化(重合)することが分かった。FT-IRによるリアルタイム反応モニターにより、通常のπ共役型の有機色素と比較して、CdTeナノ結晶増感システムは非常に高効率で重合を進行させることを見い出した。その効率は、およそ7倍程度であった。イオン液体中における基礎的な消光実験ならびに電気化学測定により、CdTeナノ結晶からジアリールヨードニウム化合物への光誘起電子移動が起こり、その電子移動速度定数が10^<10>s^<-1>オーダーであることが分かった。 さらに、半導体ナノ結晶の特徴として、大きな二光子吸収断面積に注目した。現在のところ予備的な実験により、汎用のYAGレーザー(基本波)により2光子増感重合が進行することが分かり、今後、光を用いた3次元微細加工用材料としての応用に期待が持てる。
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