研究概要 |
本研究では、固体化学の対象であった擬一次元金属錯体[PtII(CN)4]nに注目する。これは、MMLCT(Pt-Pt-配位子電荷移動)遷移に由来する蛍光特性や、Pt(III)ドープなどによる電気伝導性が発現する錯体である。この錯体に、メソゲン部位Rを導入した[Pt(CN-R)4]nを設計・合成し、その液晶形成に必要な分子設計指針を明らかにする。液晶相転移を利用して、その蛍光特性や電気伝導性を制御し、一次元錯体物性に基づく未踏技術の開拓をはかる。本年度は以下の事柄を検討した.金属-金属結合を主鎖に含む脂溶性一次元白金錯体[Pt(CN)4][Pt(C120C3NC)4]を新たに合成し、その構造ならびに溶液特性を検討した。 [Pt(CN)4][Pt(C120C3NC)4]の各種有機溶液(0.1mM)を調製し、UV-visスペクトル測定を行った。シクロヘキサンなどの有機溶媒中においてPt-Pt結合に特徴的な吸収帯(dσ*→pσ;340〜424nm)が観測され、この吸収は溶媒の極性が低くなるに従い長波長側にシフトした。このことは、低極性溶媒中において[Pt(CN)4][Pt(C120C3NC)4]におけるPt-Pt間相互作用が大きくなることを示唆する。また、UV-visスペクトルの濃度依存性を調べたところ(溶媒;シクロヘキサン、0.01〜0.6mM)、濃度の上昇に従い424nmの吸収が消失し、長波長側に新たな吸収帯(504nm)が出現した。このとき、TEM観察においてナノファイバー状の構造体が観察された。また、このファイバー状構造体の幅(40〜350nm)は、濃度に依存して変化することが分かった。 さらに、[Pt(CN)4][Pt(C120C3NC)4]の発光特性についても同様に濃度依存性を確立することができた.このことからこの一次元遷移金属錯体が溶液中で秩序構造をもつばかりでなく,その秩序構造に応じた電子状態の制御が可能となることを明らかにした.
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