本研究では、複核金属内包フラーレンにおける内包金属の磁気モーメント問の相互作用を明らかにすることと、磁気モーメント間の相互作用に、金属原子の電子配置が与える影響について明らかにすることを目的としていた。 最初の目標では、Ce_2@C_<80>とGd_2@C_<80>、および、CeGd@C_<80>を合成することを目的としていたが、結果として、Gdを含む複核金属内包フラーレンを単離するにはいたらなかった。実際に合成・単離し、磁気測定を行うことができたのは、Ce_2@C_<80>とCeLa@C_<80>およびPr_2@C_<80>であった。 Ce_2@C_<80>とCeLa@C_<80>については、^<13>C NMRの常磁性シフトの解析をしていく過程で、これまでの標準的な解析のための式として用いられていたBleaneyの式が前提としている仮定が崩れている可能性に気付き、新たに解析式を導出し、解析を行った。2つの複核金属内包フラーレンの磁気的性質を比較することで、内包された2つのCe間の磁気的相互作用は、余り大きく無いことを明らかにすることができた。 Pr_2@C_<80>については、Ce_2@C_<80>とCeLa@C_<80>と同様の抽出方法では、反応してしまうような傾向が見られ、新たに抽出方法を検討する必要があった。その結果、NMR測定を行うところまでしかできていないが、これを解析し、Ce_2@C_<80>の結果と比較することにより、内包金属の電子配置の違いによる磁気的相互作用の違いを明らかにできるものと期待している。
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