本研究課題は、ナノスケールの距離に配置した2つの金電極間に、導電性ワイヤの中央部に種々のターゲット分子を選択的に認識するための捕捉部位を導入したセンサ分子を配置し、導電性変化によってターゲットを単一〜数分子レベルで選択的に検出するナノスケールの分子センサを開発することを目的している。導電性π共役分子であるオリゴ(フェニレンエチニレン)骨格中の芳香環上に、捕捉部位として環サイズの違いによって、アルカリ金属イオンを選択的に捕捉できるクラウノファン構造と、また、センサ分子の両端で金電極と接続するためのチオール基を有するセンサ分子を電極間に固定化し、単一〜数分子レベルでのターゲットの選択的な捕捉によって生ずる電流値変化を観測する。 平成17年度は、フェニレンエチニレンワイヤの片末端に環サイズの異なるベンゾクラウン骨格を頭部に有し、また、もう片末端にアセチル基により保護されたモノチオール骨格を有する新規センサ分子を3種類合成した。さらに、電極を形成する金表面に対するセンサ分子の固定化条件の探索および二次元金表面におけるセンサ分子のアルカリ金属捕捉能を調査するために、脱保護しながら金基板へ導入を行う最適条件の検討を行うことによって、ターゲットと相互作用しないマトリックス分子中にセンサ分子を単一〜数分子単位で埋め込んだ、二成分からなる自己組織化単分子膜(SAM)を作成することに成功した。この基板について走査型トンネル顕微鏡(STM)観察を行ったところ、三種類のセンサ分子は、マトリックスであるデカンチオールSAMから突出していることが観察された。さらに、Naイオンの捕捉を行いSTM観察を行ったところ、センサ分子の見かけ上の高さは増大し、エタノール洗浄によりNaイオンを除去したとき、再び二成分SAM作成直後とほぼ同じ見かけ上の高さを示すことが観察された。本成果について、シンポジウムにて発表することが決定しており、また、現在論文投稿準備中である。
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