研究概要 |
本研究課題は、ナノスケールの距離に配置した2つの金電極間に、導電性ワイヤの中央部に種々のターゲット分子を選択的に認識するための捕捉部位を導入したセンサ分子を配置し、導電性変化によってターゲットを単一〜数分子レベルで選択的に検出するナノスケールの分子センサを開発することを目的している。導電性π共役分子であるオリゴ(フェニレンエチニレン)骨格中の芳香環上に、捕捉部位として環サイズの違いによって、アルカリ金属イオンを選択的に捕捉できるクラウノファン構造と、また、センサ分子の両端で金電極と接続するためのチオール基を有するセンサ分子を電極間に固定化し、単一〜数分子レベルでのターゲットの選択的な捕捉によって生ずる電流値変化を観測する。 平成18年度は、前年度に合成したフェニレンエチニレンワイヤの片末端に環サイズの異なるベンゾクラウン骨格を頭部に有し、また、もう片末端にアセチル基により保護されたモノチオール骨格を有する3種類の新規センサ分子を、単一成分膜として、または、ターゲットと相互作用しないマトリックス膜中に単一分散状態もしくはドメインとしてセンサ分子を導入した混合二成分膜を作成した。単一成分自己組織化膜に関して、各種表面分析装置(XPSおよび表面IR)により、ターゲットの可逆的な捕捉・放出を確認した。さらに、二成分混合自己組織化単分子膜について、走査型トンネル顕微鏡(STM)観察を行ったところ、比較的環サイズの大きなベンゾクラウン骨格を有するセンサ分子(18BC6および15BC5)では、Na+, K+, Cs+に対する捕捉能に大きな差は見られなかったものの、12BC4骨格を有するセンサ分子については、他のアルカリ金属イオンと比較してLi+の捕捉能が高かった。この結果は、溶液中におけるUV滴定の結果を支持するものである。
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