有機電解合成における支持塩の分離および廃棄物の問題を解決するために、固体塩基を用いる新規電解反応システムの開発を行った。まず、固体塩基を用いてメタノール(溶媒)をメトキサイドイオンおよびプロトンに解離することで、見かけ上支持塩を必要としない新規電解メトキシ化反応システムの開発に成功した。この電解反応システムを利用して種々の化合物の電解メトキシ化を行ったところ、いずれの場合も良好な収率で対応するメトキシ化体が得られた。また、反応終了後には固体塩基はろ過により容易に生成物から分離可能であり、さらに固体塩基は電気化学的に安定であるために再利用が可能であることも明らかになった。次に、固体塩基を用いて酢酸(溶媒)をアセタートイオンおよびプロトンに解離することで、見かけ上支持塩を必要としない新規電解アセトキシ化反応システムの開発にも成功した。この電解反応システムを利用して種々の化合物の電解アセトキシ化を行ったところ、難酸化性化合物を除き、いずれの場合も良好な収率で対応するアセトキシ化体が得られた。さらに、難酸化性化合物の電解アセトキシ化を達成するために、固体塩基を用いてトリフルオロ酢酸(溶媒)をトリフルオロアセタートイオンおよびプロトンに解離することで、見かけ上支持塩を必要としない新規電解トリフルオロアセトキシ化反応システムの開発を行った。その結果、ベンゼンやアダマンタンのような難酸化性化合物の電解トリフルオロアセトキシ化を良好な収率で行うことに成功した。
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