有機電解合成では極性有機溶媒にイオン伝導性を付与するために支持塩(支持電解質)が必要であるが、反応終了後にその支持塩を煩雑な操作により分離する必要があり、さらにその分離された支持塩の多くは再利用が難しいために廃棄物となる。この支持塩の分離および廃棄物の問題に対し、プロトン性溶媒(メタノール、酢酸、水)や基質であるカルボン酸と固体塩基の酸塩基反応に基づく新規電解反応システムの開発を行った。この電解反応システムは、プロトン性溶媒や基質であるカルボン酸と固体塩基の酸塩基反応に基づくイオン種が電荷のキャリアーとして働くため見かけ上支持塩を必要としない。この電解反応システムを利用することで、種々の有機化合物の電解メトキシ化、アセトキシ化、水中での活性オレフィンの電解還元反応、さらにはコルベ反応、交差コルベ反応、非コルベ反応を行うことに成功した。さらに固体塩基を用いる電解メトキシ化のパラレル合成への展開を図った。5個の電解セルを直列に接続することで定電流によるカルバメート類(5種類)の電解メトキシ化をパラレルに行ったところ、いずれの場合も対応するメトキシ化体を高収率で得ることに成功した。また、電解終了後、固体塩基はろ過により容易に分離可能であり、さらにろ液を濃縮するだけで目的生成物を高純度で得ることができることから、本パラレル電解メトキシ化反応システムはコンビナトリアルケミストリーに大きく貢献するものと期待される。
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