前年度の成果によって得られたモノマーの分子構造およびオリゴマーの連鎖長の異なる8シリーズ、56種類のポリエステルアミド周期共重合体試料の物性評価を行うとともに、結晶構造・固体構造の解析を行った。 周期性共重合体の中には、熱処理により複数の融解挙動を示すものが存在することを見出した。周期性共重合体の融解挙動における熱処理効果を詳細に調べた結果、熱処理後に見られる融解温度の急激な増加は、ラメラ結晶の厚化と、それに伴う結晶領域中へのアミドユニットの取り込みに起因することが明らかとなった。すなわち、結晶の大きさをコントロールすることで、周期性共重合体の熱的性質を制御できることを見出した。また、周期性共重合体の力学的性質を評価したところ、周期連鎖の長さに依存して、やわらかい性質から硬い性質まで幅広い物性を示すことが明らかとなった。 アジピン酸および炭素数が6のジオールとジアミンから合成した周期性共重合体の単結晶および配向結晶性フィルムを調製し、その結晶構造を解析に取り組んだ。電子線及びX線回折測定の結果、周期性共重合体の結晶は、単位格子中に4本のセグメントを有しており、そのセグメントは周期連鎖中の1ユニットに相当することが明らかとなった。さらに、コンピュータプログラムによる結晶構造及びパッキング解析シミュレーションを行ったところ、周期性共重合体の結晶が、エステルユニットに起因した単位格子を有すると同時に、その格子中でアミドユニットに起因した分子鎖折りたたみシート構造を形成していることが明らかとなった。また、同じユニットから構成されたポリエステル、ポリアミド、周期性共重合体結晶の分子モデルの比較から、熱安定性に優れた分子鎖設計に向けた基礎的知見を得ることに成功した。
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