1.大腸菌を用いたPPM1D触媒ドメインの発現と精製 PPM1DペプチドファージライブラリーからPPM1D結合ファージをスクリーニングする際に使用するPPM1Dタンパク質を得るために、PPM1Dの触媒ドメインを含むN端420残基をコードしたcDNAをPCR法により増幅し、制限酵素NdeI/HindIIIにより消化後、大腸菌低温誘導システムのpCold vectorに組み込んだコンストラクトを作製した。大腸菌JM109に形質転換後、IPTG発現誘導をかけることにより、PPM1Dの正常型触媒ドメイン(Wt-c)の発現を確認後、Co2+キレーティングカラムを用いて精製した。同様に、PPM1Dの酵素活性発現に必須である105位のアスパラギン酸をアラニン残基に置換した変異体(Mut-c)についても発現、精製し、高純度な精製タンパク質を得た。p53リン酸化ペプチドを用いてWt-sのホスファターゼ活性を測定したところ、PP2Cに特徴的なMg2+依存的、かつオカダ酸非依存的な酵素活性を示した事から、今回精製したWt-sが酵素活性を有する組み替えPPM1Dタンパク質であることを確認した。一方、Mut-sではこのような酵素活性は見られなかった。 2.ペプチドファージライブラリーを用いたPPM1D結合ペプチドの同定 PPM1Dの基質結合部位に結合するペプチド性阻害剤を探索するために、ランダムな12アミノ酸残基をコードしたペプチドを細胞表面に提示するM13 phage library (NEB社)を用いて、精製したWt-sに対する結合ファージのスクリーニングを実施した。PPM1Dに結合したファージの抽出は、過剰量の精製Wt-sを用いる事によって、PPM1D特異的に結合しているファージのみの単離を試みた。3回のパニング後、Wt-sに特異的に結合するクローンを20個回収し、塩基配列を解析した結果、PPM1D結合モチーフとしてプロリン残基リッチな配列を得る事に成功した。
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