1.ペプチドファージライブラリーを用いたPPM1D結合ペプチドのスクリーニング PPM1D特異的に結合するファージクローン20個回収し、塩基配列を解析したところ、PPM1Dの触媒ドメイン内に存在し、他のタンパク質との結合が予想されるPro残基に富んだloop領域(P loop)に高い相同性を有しているペプチド提示ファージが得られ、PPM1D自身による活性制御の可能性が示唆された。これまでP loop類似ペプチドの合成・精製まで終了している。 2.PPM1D基質を母体としたPPM1D阻害剤の開発 高い親和性・特異性を有する阻害剤開発のため、今回PPM1D基質として報告されている15位リン酸化p53リン酸化ペプチド(WT)の複数のアナローグを用いて速度論敵解析を実施し、PPM1D基質における酸性残基の重要性について解析した。その結果、p53リン酸化ペプチド内の酸性アミノ酸3残基をLysに置換したアナローグ(3K)では脱リン酸化はされない一方、18位Thr残基を酸性アミノ酸であるAspに置換したアナローグ(TD)ではWTに比べ約20%の親和性の増強が観察された。興味深いことに、C端アミノ酸3残基を酸性アミノ酸に置換してさらに酸性度を増加させたアナローグ(3E)では親和性が約2倍上昇し、かつ、κcat値の減少が観察されたことより、基質ペプチドヘの酸性アミノ酸残基の導入により、PPM1Dへの親和性が増強することが明らかとなった。これらの結果から、PPM1D阻害剤として3Eペプチドのリン酸化セリン残基を非水解性のリン酸化セリンミミック体であるAP4に置換したペプチドAP4-Eを作製し、MALDI-TOF-MSにより目的物が得られたことを確認した。
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